私の中高時代を彩ったのは、ゆずであった。あの夏色とか栄光の架橋とかで有名なゆずである。
しかし私は有名曲ではなく、古いカップリング曲やアルバム曲を好み、そのほとんどを作ったサブリーダーの岩沢さんのファンであった。
中1の頃、同じクラスになった子と夏色を歌って学校から帰ったことをきっかけに、2人でゆずにハマった。私は岩沢さん、彼女は北川さん(リーダー。ゆずといえばみんなが思い浮かべるだろう人)が好きだったので、Win-Winだった。今はもうちっとも連絡を取らないけれど、高2まで仲良くしていた。
私が好きになった2013年の時点でゆずはメジャーデビュー16年という長い歴史を誇っていたので、とにかく古いCDをたくさん集めた。
ブックオフに行くとアルバムは沢山置いてあるのだが、シングルを探すのは難航した。特に初期の夏色、少年、からっぽ、サヨナラバスは今では珍しい8cm CDだから、なかなか見つからなかった。今でも少年は持っていない。
ゆずもサブスクを解禁したので、こういう珍しいものや限定版、特にお気に入りのアルバム以外は処分してしまった。
中高時代、岩沢さんが好きというのは同級生に知れ渡っていたし、自己紹介ではゆずが好きと言っていた。そうすると「ゆず、私も好きだよー!」などと言ってくれる人がいる。捻くれている私はにわかと一緒にされたくないと思って「大バカ者、チョコレート、うそっぱちとかが好きかな〜」と一蹴していた。今考えても最悪。
でもゆずの曲について、浅い会話をしたいわけではなかったから。ゆずは、もっと私にとって深い意味を持ったから。
大バカ者(1998)
先ほどの写真の2枚目に歌詞が書いてある。1st single夏色のカップリング曲は、大バカ者と贈る詩だ。3曲のうち、大バカ者だけが岩沢さんの曲。
「きっと本当の声も 素直な心も 優しさも 人はみんな持ってるんだ 今はただ気づかないだけ」という歌詞は私の価値観の根幹を作った。人が信じられないとき、それでも信じたいときにはこの曲を思い出した。就活で座右の銘を聞かれたらこの歌詞を答えると思う。
チョコレート(2000)
激レアミニアルバム「ゆずマンの夏」に収録されている。私が生まれた6日後に発売された。
「忘れることに怯えるから 知らない方がマシだなんて思わないで 嘘の数が増えるくらいなら 一生が一瞬で終わったほうがいい」岩沢さんはこう思う人なんだ、と心を動かされた。こういう考え方をする人がいる、その事実によって世界に光が差したようだった。
一っ端(2006)
ゆずが10周年を超えて第二ステージに入る直前のアルバム「リボン」収録。リボン全体に、30歳を迎えるゆずの叫びが込められている。大人みたいに生活しているけど、一っ端ってなんだろう?と歌う岩沢さんは私にとって人生を先回りして教えてくれる人だった。
いつもそうだ。私より24も年上の2人が歌う歌、それは人生先回りの歌だった。
久しぶりに会った友達が変わっちゃった、友達が亡くなった、失恋した、もうすぐ30になる、父が亡くなった、結婚をする、子供が生まれた…あるいは同じような世界の見え方がどう変わるかということも、ゆずが教えてくれた。
あの頃にはもう戻れないんだと切なく語るゆずの歌はいくつかあるが、そういうことを私は14,15にして知り、未来が恐ろしかった。
今はゆずで知ったことと現実の答え合わせ中。今の私の年齢なら、ちょうど夏色や1stアルバムゆず一家を出す頃だ。